すみだ水族館 天野尚氏制作「原生林の構図」

間違いなくこれら2つの水景は、他に類を見ない傑作水景です。
そして、これらの水景を意のままに作り上げ維持できるアクアリストは、現状では天野尚氏をおいて他にいないでしょう。
それは構想から素材集め、そして実際の制作、維持管理、全てにおいて一貫したポリシーを持ち、それに集う社員の方々の実行力によって初めて実現される水景であるからこその唯一無二なのです。
まずは、世界最大のネイチャーアクアリウムを制作された天野尚氏とアクアデザインアマノ関係者皆様方に敬意を表します。

そして、これらネイチャーアクアリウムをエントランスに設置したすみだ水族館の英断は、賞賛に値するものであり、このことによりネイチャーアクアリウムが広く世間に認知されるきっかけになったことは、日本はもとより世界中のネイチャーアクアリウムファンからすみだ水族館へ対し、惜しみない賛辞を贈ってしかるべきものではないかと思います。


そういう気持ちを前提にして、恐縮ではありますがおこがましくも私の感じたままに2つの水景について、少々お話しさせていただきます。
今回は、4m水槽についてです。





すみだ水族館 エントランス正面

天野尚氏制作 自然水景(W414×D164×H170)

「原生林の構図」






水槽について

水槽の厚みはごっついです。
水族館では当たり前に見るようなアクリル厚ですが、ネイチャーアクアリウムがその中に制作されているかと思うと、何か格別の思いがあります。
あまり指が長い方ではないですが・・・比較。




横から見ると少し湾曲しているようですが・・・
でも、この水量からすると、驚異的に平面性が保たれてるのかもしれませんね。



このような丈夫そうな水槽ですが、やはりアクリルです。
既に大きな傷もついています。





照明について

ライティングは圧巻の14基。
この水景にこの照明というのは、果たして必要なのかどうか・・・私にとっては当たり前ながら未知の領域、天野氏からしても未経験のサイズなので、照明については大は小を兼ねるという考えの上で最大限設置できる台数を・・ということかもしれませんね。






砂利について

ラプラタサンドとコロラドサンドをブレンドした砂利は、違和感なくレイアウトを引き立てています。
このこだわりは、わかる人でないとわからないでしょうね。
水草レイアウトについては素人同然の水族館職員の方々には、計り知れないこだわりなんだと思います。
しかしここが大事ですし、我々ネイチャーアクアリストにとっては日常茶飯事のこだわりであるべきです。






構図を観る。

私自身の理論によるレイアウト解説です。
共感できない方もいると思いますので、そういう場合は各自の理論で画像を元にこのレイアウトをひもといてください。
ブログ等でレイアウト解説をする際に、今回のこの画像を使用していただいて構いません。
皆様方のご意見をお聞かせください。
画像使用時にコメント欄へご一報いただけると、私も見に行けますのでよろしくお願いします。


全体





基本構図
一見、単純な凹型構図のようですが、左上から重点へ斜めに渡された長い流木によって、この水景の骨子は3つの大きな不等辺三角形で構成され、非常にバランスの取れた安定感のある印象となっています。
彩度の違いは、水景の中心を表す為のもので、構図バランスの重心が右にある事がわかると思います。左右非対称で黄金比のバランスが保たれています。

アクアジャーナルVol.200の29ページの進行表にあるように、当初この構図のバランスが左右対称となっていて修正したとあります。
一番長い流木の接地点(重心)が、もっと中心よりとなっていたか、左の群落の底部が中心寄りに突き出ていたものと思われます。
いずれにせよ構図素材が大きいため、動かすのにもひと苦労だったと思いますが、実際には数センチ程度のずれであったのではないかと思います。
それほどまでにバランスをとるという事は繊細であり、構図は大胆にバランスは繊細に・・のよくわかる例だと思います。






レイアウト明暗バランス
レイアウトの明暗バランスを観る事は、写真を撮影して作品に仕上げる為には有効なチェックです。





私はカラーの方が、直感的にわかりやすいのでこちらを使います。
この水景は、まだ完成の域には達していないので、明暗バランスが単調ですが、1年経過する頃には暗部の表現が水草の繁茂によりもっと繊細でリズミカルなものになると思われます。
とはいえ、現状でも十分な暗部表現が見て取られ、これはレイアウト施工時に詳細に計算された素材の構成と配植バランスがある為のものです。
レイアウターの力量がわかる部分です。

「影」を計算してレイアウトができると、コンテスト順位はグッと上がります。








天野氏は常々、四隅の仕上げにこだわるようにと我々に教示されています。

今回は、水族館側との調整不足で、思わぬトラブルがいくつか有ったようですが、この水槽の配管もその1つです。

館内で配布されているプリントには、オープン直前の水景が印刷されています。
それをデジカメで撮影して、アップします。



この状態から、おそらく2ヶ月後ぐらいの水景が、今回アップしている画像となります。
4隅の仕上げに天野氏はどんな工夫をしていたのでしょうか?
観てみたいと思います。



右上。
最大の難所である3本の黒い配管が見事に隠されています。
さらに歳月を経る事で、ルドヴィジアが繁茂して完全に隠れてしまうものと思います。



右下の3つの捨石。
この小技が、なかなかできません。
この大きな水槽の容積からして、この3つの石の大きさは本当に微々たるものです。
しかし、この石があるのとないのとでは、自然観の演出に雲泥の差が出る事になるでしょう。
正面写真からはわからない石なんですが、これは水族館の展示水槽なので、上から覗き込んでの事を考慮した捨石となります。

これができるセンスが、石組を得意とするかどうかに関わってきます。







左側後方にも配管がありますが、これも見事に隠されています。
この水槽の水流はよく考えられていて、配水管下の通常は澱みとなる部分にも水流が届いて水草が揺れていました。





左下。
クリプトが密植されています。
この水深ですので、どんな成長を見せるのかこれからが楽しみですが、光の届きにくい低層部の処理としては陰生水草を多用する常套手段を使っています。
こちらもまだ成長が不十分であるので、天野氏の頭の中の完成図にはほど遠い水景でしょうが、植栽バランスや配石がしっかりしているので、未生育でも既に鑑賞に堪えうるものになっています。






この水槽がセットされたのが3月半ばと知り、天野氏の手法からするとこのサイズの水槽でもおそらく3ヶ月後が最初の見頃になるであろうと思い、今回の訪館となりました。

案の定、迫力のある水景となり、時間経過も十分に感じられる圧巻の水景となっていました。
しかし、水草にはまだまだ生長の余地もありますので、これから重厚感がどんどん増していくと思います。
おそらくこの水景は、今後少なくとも10年間は変わらず来場者を楽しませてくれる事になるでしょう。




気持ちよく泳ぐ魚達。





動画でもどうぞ。
今回ボリュームは絞ってないので、音声に注意してください。
(臨場感を楽しむ方が多いようなので)






まだまだこれからが見頃・・・・ポチッとな

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コメント

解説ありがとうございます。
じょえさんと観に行きたいです。

  • せーらむ
  • 2012/06/28 21:28

解説分かりやすくって、楽しく読ませてもらいました。
この水槽、色んなブログで紹介されていますが、流石の記事です。
そして全体写真も流石です!!
この記事でジャーナル1冊分のメイン記事作れそう。

10年はって言うと「そんなこと言ってじゃねてー」って突っ込みがジジィから入りますよ。(笑)
ADAの社員には頭が下がりますね〜、あんなアクロバットな
植栽方法を生み出すし、ハリウッド映画も真っ青!マトリックス並み。。。
この水槽を見てアクアリウムに魅力を感じる方が増える気がしますし、自然って良いなって感じとれると最高ですね。

アマノッチは地元で子供の頃に有った湖(潟)を作ろうとプロジェクト組んで頑張っていますよ。
彼の夢は水槽を超えて遥か先に行っています・・・

圧巻の水景ですよね。
このくらいのサイズが流木で出来る最大サイズなんでしょうか?
僕は7m水槽の方を流木でレイアウトしてほしかったです。
本物のアマゾンを見てきた天野さんに、その水中景観を表現してほしかった。
そこが少々残念です。。。

このレイアウトで僕的に一番インパクトのあった部分は、右下の小さいの3つの捨て石です。
じょえさんのこの記事で初めてその存在を知りました。
このでかさの水槽で、ここにこの大きさの石を置くんですね!
石は小さいけど、僕にとってはすげぇでかいインパクトでした!

こんばんわ。

製作過程をTvで見たときは、真ん中を斜めに横切る木だけが
めだって、実は、こんなもん?
とか、おもってましたが、やっぱ日がたって、水草が増えると印象が
かわります。実物見ないとまずいすね。。。

ほぼ中央に位置する、ミクロソラムは、このまま株がでかくなるに
任せるのか、今の大きさを維持するかで、全然違った風合いになりそうす。。

水草の管理以上に、砂の白を保つ管理者の方たちの努力に頭が
あがりません。。。^^

  • takaizami
  • 2012/06/29 00:28

解説ありがとうございます。
天野さんの解説よりわかりやすいですね(笑)
この4m水槽ですが、ボクが思うに流木があっさりし過ぎかなぁと感じます。
もっと太くてゴツい方があっていると思いますし、右から左へ斜めに横切る流木もどうも空間をぶった切っているようで違和感をもっています。
が、、、間違いなくこのレイアウトは5年後、10年後を見越したレイアウトだと思います。ミクロソが繁茂しないとダメですね。コレは。

あと、植栽している水草について、、これは60cmや90cmレイアウトと同じ水草ですので、大型水槽ならではの大型水草を使用して欲しかったなぁという印象もあります。とにかく巨大なエキノとか・・。
「より水景を大きく見せる」という事も通常のレイアウトでは大切ですが、大型水槽ならではの考え方で「より近景で存在(ワイルド)感を示す」といった方がいいとも・・。

それと、水族館の意向だと言うのは知っていますが、魚が多すぎですw


えぇ〜と、色々書きましたがこの水景、好きですよワタシw
今年中には見に行きたいなぁと思っています。

そんな所に捨て石が!!?
いやいやじぇさんならでわの解説勉強になりました。

僕的には後景は有茎ではなくアポノゲなんかでいってもらいたかったです。
なんで、社長のご自宅水槽のほうが好きですねぇ。。。

  • あくあいずむ
  • 2012/06/29 18:56

>せーらむさん
お〜一緒に行けたら楽しいのにね〜
すみだ常駐でレイアウト解説なんてどうでしょうか?

  • JOE
  • 2012/06/29 19:28

>りのさん
全体写真を、写り込み無しに撮る事は不可能なので、とりあえず人間だけはいない時にと思いました。
皆さん白っぽく写ったり、写り込みが激しかったりしますよね。
こういう場所での撮影は難しいですね。
ジャーナルでも、もっとレイアウトそのものの解説して欲しいですね。
今の所、制作記だけって感じですよね。

  • JOE
  • 2012/06/29 19:30

>toshiさん
あ、わかりました?あそこのやり取り面白かったです。
あの体勢で植栽するなんて、まっぴらごめんですね。
この水槽を見て、みんなアクアリウムや水草や自然に興味もってくれるとうれしいですよね。
きっかけにはなってると思うんですが、あとは小売店次第かもしれません。
今まで同じ感じでいると、せっかくのこのきっかけをうまく活かしきれないかもしれないですね。
毛嫌いするショップもあるかもしれませんが、こういう流れを美味く利用すれば良いんですよね。

干潟って、再生できるんですかねぇ。それができれば本当に世界的に注目が集まりますよね。がんばって欲しいですし、協力もしたいです。

  • JOE
  • 2012/06/29 19:35

>ほんだしさん
流木そのものが、なかなか無いでしょうね。
ただ、これよりも大きい流木は、バブル頃には入荷してる店なんかも有ったんですけどね。
この水景は、水中を覗いたそのままの原寸大で表現しているという事らしいですが、それならばもっと水槽を取り巻く景観も工夫して、でっかい流木から枝が折れてそのまま水中に突き刺さってるとか、そこまでの演出も期待したかったですね。

捨石、やる方もやる方なら、気づき訪も気づく方かもしれません。
もしかすると、そんなつもりで置いてるわけじゃなくて、自然に崩れ落ちただけかもw
それはそれで、記事を楽しんでいただいたなら十分です。

  • JOE
  • 2012/06/29 19:39

>takaizamiさん
横切ってる流木インパクトありますよね。
まだまだこれからミクロやらが繁茂してきて本領発揮と思います。
最低1年経過後から、本当の見頃になってくると思われます。
真ん中のミクロどうするでしょうね。むしり取るって暴挙も十分考え得ることです・・・

砂は全く問題なく綺麗なままでしたね。
いろいろ大変なんでしょうね。

  • JOE
  • 2012/06/29 19:43

>inoMetaboさん
天野さんよりですか〜(爆)
ご本人の意図とは全く違った解説だったりしてね。
このレイアウトの流木は、水草の繁茂を計算してあっさりめのものを配置したのかもしれないですね。
もしくは手に入らなかったw

たぶん、今回の水草の種類というのは、アイドリング的な選択なんだと思うんです。
絶対に失敗しない、様子見の選択だったと思っています。
自分がもしこれらの水槽を任されたとして、やはり同じような選択をしたと思います。それほどに無難な選択なので、マニアの皆さんには物足りない印象になってるのではと思います。

是非、ご覧になってください。
パーティーの時も良いかもしれないですよ。

  • JOE
  • 2012/06/29 19:50

>あくあいずむさん
捨石って、むずかしいですよね。
でも、本当に捨石なのかどうか怪しいですけどねw
記事としては、面白かったかも(笑)

水草の種類はやはり、みなさんこだわりの選択がありますよね。
失敗できない状況での選択だったので、無難にまとめてるんでしょうね。
今後、創造配植で面白くなっていくかもしれないですよ。

  • JOE
  • 2012/06/29 19:53

最恨的就是那??出?接

什?都想100%得到的人,最后什?也得不到,必然成?失?者。

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